20170918-2



数々の試練が彼をより大きくした

2001年に雑誌モデルとして芸能界に入ったイ・ジュンギ。同年にはMBC『会いたくて』で、俳優としても活動を開始した。


イ・ジュンギの出世作といえば、何といっても2005年に公開された映画『王の男』である。1230万の動員数を誇り、韓国歴代観客動員数でも上位に入る傑作だ。


しかし、この大ヒットは「自分を天狗にしてしまった」とイ・ジュンギは後に語っている。


「当時は、自分がかなり優秀だと考えていました。それが無視されるようになり、自分が間違っていたと感じ、緊張するようになったのです。その期間をどうにか乗り切ったおかげで、今では周囲も無視せずに見てくれるようになりました。あのときの反省がなかったら、私の作品が好意的に受け取られなかったでしょう。『過ぎてみれば、ああいう時間も必要だった』といえるようにしたいのです」


実際、『王の男』の後に出演した2本の映画は興行的には成功しなかった。イ・ジュンギの周囲から人が離れ、彼自身もそれまでの慢心を悔いるようになった。


栄光と挫折を味わったイ・ジュンギが起死回生の作品として出演したのが、2008年放送の『一枝梅(イルジメ)』だ。


この作品は視聴率30%を越える大ヒットを飛ばし、主演のイ・ジュンギはSBS演技大賞の最優秀男優演技賞を受賞する。さらに彼は同年に出演した『ヒーロー』でもMBC演技大賞を受賞。第2の全盛期を迎える。(※ヒーローではノミネートはされましたが受賞していません。)

まさに飛ぶ鳥を落とす勢いのイ・ジュンギ。しかし、絶頂期を迎える彼が選んだのは、28歳での現役入隊だった。


2010年5月3日、多くのファンは一時の別れを惜しんだ。そして2012年2月16日、約2年の軍務期間を終えたイ・ジュンギは、以前と少しも変わらぬ姿をファンに見せた。


彼の除隊記念ファンミーティングは、発売後わずか1分で完売した。それだけ多くのファンが彼の帰りを待っていたのだ。


除隊後ひと段落がついたイ・ジュンギは、すぐに『アラン使道伝』への出演を決心した。ヒロインを演じたシン・ミナとのかけ合いは素晴らしく、ブランクをまったく感じさせなかった。

彼は、放送終了後にこう述べた。


「すがすがしい満足感とともに、くやしいところもあります。序盤は精神的負担が大きく、みなさんがイ・ジュンギという俳優をどれくらい信頼してくださるのか、心配でした。放送が終わり、多くの称賛を受けたことには満足ですが、期待値があまりにも大きかったので、物足りなさも少しあります」


イ・ジュンギが話す“物足りなさ”とはいったい何か。

「ファンタジーロマンスに対する期待感がありました。何よりもイ・ジュンギが新たなロマンスをお見せする機会だったのに、事件重視になってしまったのです」


復帰作でもこのように冷静に自己分析をするイ・ジュンギ。そんな彼も、2年ぶりのドラマ復帰には大きな恐怖を抱いていたという。


「序盤に現場で不自然に振る舞っていたら、撮影は難航していたと思います。勘が鈍っていないだろうか、カメラが恐ろしくないだろうか……という思いがありました。それでも現場が楽しかったおかげで、“感じ”をつかむことができました。スタッフや同僚のサポートも大きいものでした」


多くの人に支えられていることを実感したイ・ジュンギ。軍務に励んだ2年間が自分を大きく変えたと語る。


「本当に大切な経験をしました。2年間、やりたいことができない時間を過ごし、多くのことを考えました。何よりも与えられた機会に、さらにありがたみを感じるようになりました」

周囲への感謝の気持ちを忘れないイ・ジュンギ。最新作は『夜を歩く士(ソンビ)』である。このドラマで彼は、王の守護鬼として120年間も生きていくヴァンパイアに扮している。


「実際にヴァンパイアは存在しませんが、リアルさが大事です。視聴者のみなさんがリアリティを感じられるように演技しました」


確かに、イ・ジュンギの演技には「こんなヴァンパイアがいるかもしれない」と思わせる現実味があった。彼の意図は成功したといえるだろう。


今後は本格的な悪役に挑戦したいという。それは演技の多様性を広げたいと真剣に考えているからなのだ。


「既存のイメージから脱皮したいという思いがあります。それに、人間イ・ジュンギの中には“ワル”の要素もあるんですよ」


そう語るイ・ジュンギ。今後は“恐ろしい悪役”として視聴者の前に登場するかもしれない。それは、俳優イ・ジュンギの成長を示す役柄になるのだろう。